プロジェクトについて

プロジェクトの概要

本プロジェクトの目標は先端技術を用いた循環型農業への移行です。最新のセンサー、およびAI(人口知能)技術の応用を通して、循環型農業馬鈴薯(ジャガイモ)生産システムの構築と、生産性増加を試みます。

有望な国際的パートナーシップに支えられ、このプロジェクトでは、馬鈴薯(じゃがいも)のバリューチェーンを最適化するために植物学、情報工学といった分野の様々な先端技術の融合をおこなっています。応用事例の成果として、馬鈴薯栽培に関わる人々(例:農業経営者、自治体、食品加工会社)と共に、持続可能であり、且つ食品安全性をの高い農業技術開発を世界に向けて発信します。

また近年、オランダ国内の社会問題となっている、農業セクターによる労働者不足、持続可能性のニーズ、気候変動への対応といったテーマは、日本の農家にとっても問題点となっています。生産性向上、コスト削減、そして正確な作物管理の実施といった様々な要因により効率化が生み出されます。このプロジェクトは、これらの要因に対する解決法を提供します。

自然環境により適した作物を選択することで収量増加が可能となります。今案件は、自立走行機器に最新精密センサーを搭載しています。収集されたデータは、AI技術を活用することで、作物管理を向上し、また化学肥料や農薬の使用削減に寄与します。

パートナーとの連携

馬鈴薯生産者にとって、生育条件や市場性など、それぞれの品種の特性を知ることは重要なことです。また、種いもの品質が高収穫の基礎となります。そのため、種いもの品質を保証する品種と最適な栽培システムの選択が要求されます。品種に関しては、種苗会社との密接な連携、そして栽培システムについては、適切な生産方法、検査、認証が必要になります。

オランダの馬鈴薯の生産性は、日本の生産性よりもはるかに高く、反収が4.5~5.5トンといわれています(参照:オランダ馬鈴薯産業の状況とWURとスタートする馬鈴薯共同研究の紹介)。 日本とオランダの生産性のギャップを縮めようと、オランダの種苗会社Solyntaは日本におけるオランダの種いも用栽培品種の試験栽培の実施を強く望んでいます。昨今の技術革新により、種子から馬鈴薯を生産する過程においてのより精密な病害防止対策が可能となりました。Solyntaは、オランダで種子から馬鈴薯を生産しており、その技術は毎年精度を著しくあげています。今後は、さらなる市場拡大を目指しています。

IMEC・OnePlanetはテラヘルツ波センサー、または電気による比抵抗トモグラフィを用いて開発された農業食品に特化した新型センサーを利用して、馬鈴薯の試験栽培の、作物成長のモニタリング、または成長条件に関連する情報収集を実施することにより、生産性の向上 を可能とします。

その集められたデータを用いて、精密農業のモデルの基礎となる、作物成長モデルの最適化がおこなわれます。NTTグループは農業食品セクターにおいてこの分野でサービスを提供したいと考えています。成長期間中、作物それぞれの管理オペレーションにおける意思決定事項は収集されたデータによってサポートされ、意思決定サポートモデルからの指示の精度を高めます。

ワーヘニンゲン大学(WUR)と農研機構(NARO)はドローンを使ったデータ収集について豊富な知識があり、その一方で、NTTグループは作物の成長のモニタリングに必要な高解像度の衛星画像データを提供することができます。WURは、このデータを利用することにより、意思決定サポートモデルが改善され、農薬散布や化学肥料の施肥といった作業の最適化ための圃場マップの作成がおこなわれます。

Kvernelandとクボタは、アドバイスを実際に応用し、生育状況や収穫時に塊茎が受けたダメージを記録するセンサーを搭載した、精密マップを実行に移せる新バージョンの機器を導入したいと考えています。このデータは馬鈴薯の貯蔵の最適化に有益なインプットとなる塊茎の貯蔵性の予想に利用できます。

WUR は今プロジェクトにおいて、様々な貯蔵管理における馬鈴薯の塊茎(かいけい)の状態を予想するモデルの改良と、馬鈴薯のバッチ毎の貯蔵管理を調整するための馬鈴薯の成長条件に関するデータ収集をおこなう予定です。馬鈴薯の貯蔵性と最終品質は、収穫時の生理的成熟度、収穫時に切傷、裂傷、打撲傷を受けた後の傷の治癒の具合、貯蔵状態など様々な要因に左右されます。これらの要因が、重量の減少、腐りやすさ、糖分の蓄積、休眠の解除(発芽)などに影響を及ぼします。また収穫時の塊茎の成熟度は様々な事柄によって決まります。重要なのは、成長期間中の気候条件と作物の生育に対する影響をより理解することです。農研機構は、最適な品種を選択するにあたり、バリューチェーンからの洞察を蓄積することによって効率向上を図ることを期待しています。

今プロジェクトによって生み出された新しい見識や成果は、東京にある在オランダ大使館とGMV/ FME (オランダのアグロテクノロジー産業雇用者団体)の様々なネットワークを経由して、より多くの方々に共有されます。